2021年5月12日水曜日

レーシングドローンにおけるリポバッテリーの内部抵抗について


ドローンレースを長くやっているとリポバッテリーがどんどん増えていきますよね、いったい一年間で何本買うんだろうかと思うほど買っちゃいます、今回はそんな悩みの種のリポバッテリーの内部抵抗について考えてみたいと思います。

バッテリーのライフってこんな感じの流れじゃないでしょうか

新品状態の内は全開にしても中々Low Battery Alarmにならず飛んでいられる。

しばらく使い込むとアラームが出る時間が短くなり。

最後は飛んですぐアラームが出るようになって使えなくなる。

これって何が原因なんでしょうか?

ずばり内部抵抗が大きくなるから  です。

一番レースで使われているTATUUのRlineバッテリーをISDTなどの充電器で内部抵抗を表示させると、一番いい状態の各セルの内部抵抗って大体1mΩ~3mΩ(かなりいい個体です)

(内部抵抗は常に電圧により変化しています、正確に測るのであれば4.2v付近つまり充電終了前で測定するべきです)

中間ぐらいで4mΩ~7mΩ(大抵のrlineはここに収まります)、

で死んだかなと思われるものは10mΩ以上になります。



この内部抵抗なんてものは普通のアプリケーションでは無視される値です、だって3mΩですよ 

3/1000Ωなんてテスターのリード線だって100mΩ~500mΩぐらいありますので計測すらめんどくさい値です(4点計測法とか使います)

じゃぁなんでドローンレースだと意味があるの?

というのは使う電流のスケールが大きすぎることです、

例えばストレート全開状態で各モータが使う電流はバラバラだと思いますが平均30A使ったとして合計120A、この普通では考えられない大電流が流れた場合微小の内部抵抗の値が大きく影響を与えます。

例えば [おまえは既に死んでいる]レベルのリポの場合だと 

内部抵抗は各セル10mΩで6セルだと合計60mΩ、E=RI(オームの法則ですよ、覚えていますか?E=電圧(V)、R=抵抗(Ω)、I=電流(A)です)

E=0.06(Ω)×120(A) ですのでE=7.2Vになります、これが電圧降下になりますので

最初25Vあった6セルリポがこの場合17.8Vまで下がります。セル単位でいうと2.96V

こうなるともうアラームが出まくるのは仕方ありませんね。


次に[オレいくらでも電流流しちゃうぜ!ヒャッホー]レベルのリポの場合だと

内部抵抗は各セル3mΩで6セルだと合計18mΩ、E=0.018(Ω)×120(A) ですので

E=2.16Vが電圧降下になります,この場合最初6セル25vが22.84vこれだと全然問題ありません。

このようにレーシングドローンの場合は普通のドローンに比べ使う電流が大きすぎるので微小な内部抵抗の変化によって大きく電圧降下が変化するのがわかります。


式や文章だけだとわかりずらいかもしれませんのでここでは回路シミュレータ(LTSPICE)でグラフ表示してみます.

[おまえは既に死んでいる]レベルのリポ

6セルリポバッテリー、各セル平均内部抵抗10mΩ合計60mΩ、25Vの時、

負荷0Aから120Aまで変動


[オレいくらでも電流流しちゃうぜ!ヒャッホー]レベルのリポ

6セルリポバッテリー、各セル平均内部抵抗3mΩ合計18mΩ、25Vの時、

負荷0Aから120Aまで変動


ということでリポバッテリーの状態を判断する場合は内部抵抗値を計れば

大体わかるということがわかります。

じゃあ内部抵抗を上げない使い方ってどーするの?と思いますが

現在のJDLで採用されている予選方式(90秒の間に何周回れるか)では

リポに多大な負荷をかけることになりますので、どうしても寿命は短くなる方向になります。

やはりリポを買い続けるのが正解かもしれません。












2021年3月16日火曜日

モーションコントローラ実験

 加速度センサ、ジャイロセンサといえば昔から電子工作が趣味の人間なら一度は手を出した経験があると思いますが、当然のごとく私も以前にハマった記憶があります。

しかし実際に加速度、角速度の生データをみると当然のごとくノイズにまみれていて使い物にならなかった記憶しかありません、以前は今のように簡単に使えるフィルタ等がなく全て自前でフィルタ類を用意しなければなかったからです。

ただ現在はちがいます、センサ自体も進化しフィルタ類もライブラリという形で誰でもマイコン機種を問わず簡単に使える環境が揃っています。(例えばカルマンフィルタ、相補フィルタ、MadGwickフィルタなど数学的知識がないととても扱えるようなフィルタではありませんが現在は関数の形で生センサデータを送ると綺麗にフィルタリングされて戻ってきます)

ただしかし、必ずここで問題になるのはyaw(Z)軸のドリフト問題です。

yaw軸のドリフト問題というのは簡単にいうとpitch(Y軸)、roll(X軸)、yaw(Z軸)のうちyawだけが計算で角度を求めるため計算誤差が蓄積されていき結果ドリフトという現象になることです。(ドローンでいうと、ラダーのセンターが時間と共にズレていくことになります)

この問題を解決するために今までの加速度、角速度の6軸に加え、地磁気の3軸を足した9軸センサというものもありますが、自然界の地磁気というものは人工物である電線、配電盤、鉄塔などの磁力に比べると遥かに小さく特に屋内などでは使い物にならないようです。

このドリフト問題、例えばセンサーを手にもってドローンを目視で飛ばすような場合、最初はいいのですがドリフト量が大きくなりキャリブレーション位置からラダーのセンターが180°ズレた場合は体はドローンと反対方向を向くことになり、とても目視できる状況ではないのは明らかです、

ただしかしFPVだったらどうでしょうか?

この疑問から今回のプロジェクトはスタート致しました。

FPVですとラダーのセンターがズレた場合も映像でズレを認識できるし体がドローンと反対方向を向いていても操縦ができるのではないか?

とりあえず今回はこれを検証にするために実験プラットフォームを作成してみました

センサーは3軸加速度、3軸角速度が取れるMPU6050(I2C接続)を使用し生データをMadGwickフィルタに入れその後各軸角度に変換しDAコンバータ変換後、送信機であるT_LIGHTに送っています。使用マイコンはSTM32F103





ドリフトが発生してもFPVで飛ぶことができるのか?

というかその前にモーションセンサで飛ばすこと自体できるのか?を検証してみます。